【炉辺歓談】築城している慶應生に話を聞いてきた

築城作業について


編集部:実際の築城についてお聞きしたいんですけど、どこで築城されてるんですか?

今村さん:群馬県藤岡市です。都会からは車使って2時間弱ほど。

編集部:意外と近めなんですね。

今村さん:そうですね。でも標高650mの山林が舞台なので、キツツキの音とか鹿の声とか聞こえますよ。東京在住の人からしたら、新鮮な環境だと思います。特に、都会でしか生活したことないという人には一度でいいからこういうの自然を体験してほしいって思いますね。偉そうだけど(笑)

編集部:確かに都内じゃなかなか味わえない環境ですね。

今村さん:そうです。満開の星空の下、友と焚火を囲んで酒を酌み交わす。絶対東京じゃできません。一銭の謝礼も払えないけれど、手伝いに来てくれたら非日常体験と命の保証は約束するという感じです。

(築城現場での焚き火の様子)

 

編集部:そうなると築城作業はずっとその群馬の山奥で進めている形ですか

今村さん:いや、現地はインフラが整っていないので、今夏の作業は埼玉今村家のガレージでして、今まさにこれを運搬して現地で組み立てているところです。

編集部:実家で木材を切ってって感じですね。

今村さん:そうです。トラックで運搬するという前提があるので、例えば6mの材料が必要な場合、そのままだとトラックに乗らないので、3mの木材の2本を現地で組む必要があるんです。そのために日本の伝統の組木技術勉強して、本計画に適した継ぎ方を独自に開発したりしました。

ちなみに、いまは群馬で築城開始してはいるけど、想像以上に土地が荒れていたので土地開拓に手こずっています。

編集部:土地開拓からやっちゃうってかなり本格的ですね(笑)

今村さん:ここ最近はずっと木を伐り倒したり土を掘ったりしてます。

(埼玉県の今村さんの実家ガレージにて。まるで材木店)

 

編集部 : 作業をしている上でのこだわりってありますか?

今村さん : 一つ挙げるとするのなら、可能な限り電動工具は使わないという点ですかね。ぶっちゃけて言ってしまえば、今年の作業なんて、電動工具が揃っていれば自分一人でもできちゃう程度のものですよ。でもね、先ほど話した通り、本計画は仲間の協力を得ることで初めて意味が生まれるんです。だから、敢えて時間と手間がかかる手作業で行い、仕事を皆で分担することを意識しています。

編集部 : 手作業ということは、ノコギリとか使ってってことですね?

今村さん: そうです。ノコギリなんてまだ可愛いもんですよ(笑) カンナとかノミとか、普通に生活してたら一生触れないような工具を使っています。手伝いに来た人たちに使い方を数分で説明して、あとは怪我だけはしないようにということで作業をお願いしています。驚くことにみんな上手なんですよ。初めて使うはずなのに(笑)

編集部: すごいですね(笑) でも、手作業ということは若干の誤差も生まれたりしますか?

今村さん : 多少の誤差は黙認しています。別に100年もつ家を作っているわけではないので。角材を誤って切っちゃう子も結構います。本当に申し訳なさそうに謝って来るんですが、僕は内心『しめた!』と思っています。完成後、囲炉裏を囲みながら天井を指差して『あそこは◯◯が間違えて切っちゃったんだよ〜』とかいう思い出話ができるじゃないですか(笑)

(ノミを使って角材を加工する様子)

 

編集部:築城が終わった後、城はどうしていくんですか?

今村さん:実はあまり考えていないんですが、築城に協力してくれた人に無償で貸し出しをしようと考えています。使用料とか取ったら儲かると思うんですけど、営利目的の城じゃないし、やっぱりみんなで作った過程が一番大事なので。

編集部:ちなみに築城にかかる費用っていうのはどうやって…

今村さん:基本的には自腹です。あとは、まだお名前は明かせないんですが、幾らか支援してくださっている方がいて。その方も、本計画が利益を追求するわけではなく、ただ純粋に城を作り、若者の交流の場として捉えているという点を評価してくださっている感じです。

今後のことで言うと、そもそもこれは五カ年計画なんです。今年は建物を一つ作ることで形としての実績を示し、来年以降は資金ももっと集めた上で、新たな建築物を建てなくてはなりません。

編集部:五カ年計画なんですね。ちなみにいまの進捗としては?

今村さん:いまは囲炉裏の間を作ってます。模型もありますよ。

(今村さん手作りの模型。ちなみに風呂敷も紋入りの手染めしたもの)

 

編集部:なかなかの大きさですね(笑)

今村さん:横浜のマックでこれ(模型)広げてたら店員さんに「すみません当店ではそういうことは…」って言われました(笑) 

編集部:そういうことってどういうことだよって感じですね(笑)

 

人と会うことの大切さ


編集部:この築城をはじめてみて、得たことはありますか?

今村さん:人と会うことの大切さを改めて痛感しました。

個人的な話をすると、僕は国立大を目指して浪人をしていたんだけど、宅浪していた時期があって。長期間孤独でいることの辛さを痛いほど経験しました。今回の仲間を巻き込んだ築城計画はその反動なのかもしれないけど、ここで改めて人と会うことの大切さを学んだように思います。

編集部:人との繋がりの部分ですね。

今村さん:はい。例えば、僕の高校同期と中学同期が築城現場で仲良くなる、みたいな場面があって、「友達の友達は友達」じゃないけど、この活動がなかったら知り合わなかった人同士が繋がって、その繋がりがいつかどこかで役に立てばいいな、と。だから今までの学歴とか年齢とか関係なく志さえあれば手伝いに来てほしいと思ってます。

編集部:築城作業をする中で楽しかったことはありますか?

今村さん:楽しいことといえばはやっぱり久しぶりに会った友達とかけがえのない時間を過ごせるところですね。お互いの近況報告だったり、くだらない思い出話に盛り上がったり、あとは将来の話とか、真面目な話題だったり。

あとはそうだ、すごく嬉しかったことがあって。実家の正面に美大の講師をやってる年配の方が住んでいるんですけど、いつも僕たちがやっている作業を見てくれていたみたいで、「山に行ったり手伝いはできないけど、城が完成したらこれを飾ってほしい」って、今村家の家紋の鋳物をくださったんです。これはもう嬉しくて涙が出そうでした。

編集部:すごく心温まる話ですね。

今村さん:本当に。作業してると近所の小学生とかも遊びに来て、物珍しそうに見てますね(笑) 作業で相当音がするので間違いなく近所迷惑なんですが、皆温かく接してくれて。本当にご近所さんにも恵まれていて感謝感謝です。

(ご近所さん作成の今村家家紋(左)と琴辻城旗印(右))

 

お金が全てではない


今村さん : 今回の計画でもう一つ得たものがあるとすれば、それは世の中お金が全てじゃない、ってことですね。

編集部 : と言いますと?

今村さん : 今、ブラック企業とか残業とか色々騒がれている時代じゃないですか。そんな中、この計画って極めて異質なものだと思うんですよ。つまり、一銭の見返りもなく、むしろ埼玉群馬までの交通費がかかるのに、皆忙しい時期に時間とお金をかけてわざわざ手伝いに来る。協力者の9割以上が東京神奈川住みなので、交通費も洒落にならない。これってよくよく考えてみたら異常じゃないですか?

編集部 : 確かにそうですね。

今村さん : もちろんお金も大事です。でも、世の中お金より大事なものがあるそしてそれは何かわからないけど、その答えは築城計画のどこかにあるような気がしています。例えば、もし僕が『完成後この城を使って旅館を立ち上げ、金儲けをしたい。だからみんな力を貸してくれ!』って言っていたとしたら、90人も協力者は集まっていなかったと思いますね。純粋に『ものづくり』に魅せられ、仲間の大切さをよく知っている者たちだけが、見返りを求めずに集まったんだと思っています。

(21歳の大学生たちが、子供のようにシャベルを使って無邪気に土を掘る)

 

編集部:逆に築城作業の中で辛かったことはありますか?

今村さん:辛かったことは現時点でないんですが、人に適切な指示を出すことの難しさに直面しています僕はSNSで築城協力者の募集をかけているんですけど、日によって協力者の人数がばらばらだったりするから、仕事をいかに効率的に配分が難しいですね。その人にふさわしい仕事を与えなければならないので。

編集部:就活で話せそうですね(笑)

今村さん:だといいですけどね(笑)

でも、自分がそう言う立場を経験したから言えることなんですが、人の上に立つような仕事をしていらっしゃる方は本当にすごいと感じました。自分もいつか人の上に立つ時に、各々の才能を見極め、適切な指示が出せる人間になりたいと思うようになりました。

編集部:将来に繋がりそうな経験になってますね。ちなみにいま築城はどのくらいのペースでしてるんですか?

今村さん:基本的に休日メインです。三田祭期間は毎日のように行ってましたね、泊まったりもしました。それこそ電気も水もないから焚き火を囲んで、みたいな。ただこのままだと冬越せないので、今年中に柱だけは建てちゃいたいなと思ってます。もう琴辻は雪も降っちゃったので、年内はあと2,3回くらい行けていいとこかなって感じです。

(作業後の青春を感じる一枚。仮組み立て中の様子)

 

編集部:今村さんにとって、この活動は今後の人生においてどういう位置付けになっていくと思いますか?

今村さん:活動内容はともかく、ここで出会った人との関係は消えることはないと思ってます。築城協力者を琴辻城士って呼んでるんですけど、もし城が廃れてしまっても城士の繋がりは消えることはないので。その繋がりがどこかで役に立てば、と。

編集部:ちなみに今後建築学科に行こうとかは?

今村さん:これはあくまで趣味だからこれを仕事にしようと思ってるわけではないので、建築学科にいくとかは考えてないですね。本計画の支援者も「子供のような純粋な心と好奇心でやってる点を評価する」って仰ってるので。やっぱり、こと今回の計画に関していえば、利益を求めてない点が大事だと思います。

編集部:本当に人との繋がりに重点を置いた活動だということですね。

今村さん:まさにそうです。この活動には合言葉があって、炉辺歓談」っていうんですけど、読んで字の如く炉の周りでうちとけて楽しく語らう、って意味で。そういうことを大事にしています。

編集部:いい言葉ですね。

(今村さんが描いた囲炉裏の間の完成予想図。『炉辺歓談』が掲げられている)

 

編集部:最後になるのですが、こういう経験をした今村さんだからこそ、今の大学生に向けて伝えられるメッセージはありますか?

今村さん:やりたいと思ったらお金と時間を気にせずにやればいいと思っています。築城作業のために群馬行くのは何時間もかかるし、もちろん材料費もかかるけど、それでも楽しくてやりたいと思ったからやってます。だからやりたいことにはお金と時間を惜しまないというのは今回のことですごく感じたかな。

編集部:時間を自由に使える大学時代ならではですね。ぜひ私たちも今度築城作業にお邪魔させてください。

今村さん:もちろん大歓迎です。せっかくいい写真が多いので、いっぱい使ってくださいね(笑)

編集部:かしこまりました(笑)

 

ということで以下選りすぐりの築城作業の様子が伝わる写真を数枚掲載します。

 

まとめ


今村さんの大学生ながら城を建てるという一見突飛な行動の影に、友人を大切に思う気持ちをひしひしと感じ取ることができました。

この記事を読んだあなたも、これを機会に最近疎遠になっている友人に連絡を取ってみてはいかがでしょうか?

また、本メディアへの写真の掲載を快諾してくださった今村さんの高校同期の方々、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました!

 

教訓

「やりたいと思ったらお金と時間を気にせずにやればいい」

 

今村さんの活動については以下からご覧頂けます。築城に参加してみたい・支援したい方をお待ちしております。

facebookページ:今村秀一朗(https://www.facebook.com/shuichiro.imamura.7

 

ライター:小原

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